「Sports Analyst Meetup」 #spoana を2019年に5回開催した話
「スポーツアナリティクス Advent Calendar 2019」*1の1日目の記事です。
はじめに
スポーツデータ分析を題材にした「Sports Analyst Meetup」*2というイベントの運営に関わっています。2019年2月に初開催し、ご好評もあり合計5回に渡って開催することができました。
スポーツアナリストおよびスポーツデータ分析に興味のある方に向けたコミュニティです。
本コミュニティはスポーツのジャンルを問わずスポーツアナリスト(を目指す人)にとって有益な情報共有の場になることを目的としています。
本記事では、全5回を振り返る形でSports Analyst Meetup、通称「spoana」を紹介します。
発足の背景
spoana発足のきっかけは、2018年の「Japan.R」というイベントでした。Japan.Rは年に一度開催されている統計処理ソフトウェア「R言語」に関する勉強会です。
このイベントでは多くの方がR言語を用いた分析結果などを発表しており、スポーツを分析対象にした発表が何件かありました。その流れで「スポーツに絞った勉強会を開催しても面白いのではないか」となり、分科する形で開催が計画されました。
詳細は発起人の tsuyupon さんがブログにまとめています*3。
第1回(2月24日)
第1回は報知新聞社さんに会場をご提供いただき、2月24日に開催しました。30分程度の「ロングトーク」+1人10分弱の「ライトニングトーク(LT)」という構成で、この構成は第5回まで継続しています。
ロングトークは自分が担当し、事業会社のデータ分析職の視点から「目標達成に導くデータ分析」と第して講演しました。
LTは初回にも関わらず多くのご応募をいただき、12件の発表がありました。競技はF1、サッカー、登山、自転車、野球、バスケ、ゴルフ、テニス、フィギュアスケートと多岐にわたっており、企画趣旨に沿ったイベントが実現できたと感じました。
イベントは「パ・リーグ インサイト」に取材を受けたり*4、発表者の方が個別の取材を受けたり*5、想像以上の反響となりました。多くの方々のご協力を得て、spoanaというイベントの可能性を感じた第1回となりました。
第2回(5月12日)
第2回はデータスタジアムさんに会場をご提供いただき、5月12日に開催しました。
第1回の実績のおかげか、実務としてスポーツ分析に関わるお二方にロングトークをお願いすることができました。
小山浩之さんからは、自転車競技の適切なペース配分設定に遺伝的アルゴリズムを活用している話をお聞きしました。「山奥での開催もあり、計算資源との戦いもある」など、実際に現場で取り組む方ならではの意見が印象的でした。
加藤健太さんには、ブラインドサッカー日本代表のデータ分析の取り組みについて、ブラインドサッカーというスポーツの特性を捉え、適切な課題を設定し現場と合意し、分析に至るなどの過程も含めてご紹介いただきました。データ分析という文脈だとスポーツでも「モデリング以外の部分」が大切なんだなあという確認もでき、興味深いお話でした。
LTは10件で、バドミントン、相撲、セーリング、卓球、登山、サッカー、バスケットボール、部活動と幅広い応募を頂きました。
第3回(6月30日)
第3回はダイナミックプラスさんに会場をご提供いただき、6月30日に開催しました。
ロングトークは萩元徹さんに「Jリーグ導入事例から見えてきた、ダイナミックプライシングの未来」という題目でご発表いただきました。近年多くのスポーツで導入が進むダイナミックプライシングの仕組みを開発する会社での事例をご紹介いただき、勝敗とは違った観点でのスポーツ分析の領域を知ることができました。スポーツの可能性の大きさを改めて実感しました。
LTは怒涛の18本でした。競技はバドミントン、フリスビー、テニス、ラグビー、野球、サッカーがあり、レーティングやオリンピックを題材にした発表もありました。また「e sports」の文脈で「Magic the Gathering」というカードゲームを紹介した方もいらっしゃいました。
現場でスポーツ分析に取り組む方から、普段はIT企業で開発している方など、多種多様な方々がスポーツデータ分析という文脈で集まってくださっているなあと感じています。
第4回(8月24日)
第4回はSportipさんが入居しているNTTドコモ・ベンチャーズさんに会場をご提供いただき、8月24日に開催しました。
ロングトークはSportipの高久侑也さんと、スポーツ分析業界で実際に働き始めたTKB84さんにお願いしました。
高久さんがCEOを務めるSportipは、競技者の動きや姿勢など個人のデータを収集・分析できるような仕組みを提供しています。プロ野球選手らに実際に提供しているアプリのデモも含めて、Sportipの取り組みやビジョンなどをご紹介いただきました。
TKB84さんは「スポーツ分析業界に飛び込んで半年で見えてきた、現状の概観と今後の展望」という題目での発表でした。ご自身の経歴や現状の分析、そして「今後どのような人材が求められるか」という展望などの生々しい話も含めて語っていただきました。
LTは12件、競技は器械体操、ボウリング、ダーツ、大相撲、トライアスロン、バスケットボール、ラグビー、野球、サッカーでした。以前のLT登壇の反響をご共有くださった方や、自分の第3回でのLTを追加検証してくださった方もいて、一定回数を重ねてきたことを実感した場面が多かったです。
第5回(11月2日)
第5回はDeNAさんに会場をご提供いただき、11月2日に開催しました。
ロングトークはKaggle繋がりで以前から親交のあった大越拓実さんと、システム会社として野球界を支援しているライブリッツ株式会社の安田峻さんにお願いしました。
大越さんは『マネーボール』に代表される野球でのデータ活用について概説し、具体的な分析手法の事例をご紹介くださいました。第1回開催時から個人的にいつか発表してほしいと思っていた方で、遂に実現して本当に嬉しかったです。
安田さんは、データを活用して野球界をより良くする仕組みについての発表でした。データを横断的に共有できる基盤を作るのはスポーツ業界に限らず大切なことで、素晴らしい取り組みだなあと感じました。システムの費用対効果をどのように示すかはなかなか難しいなと考えさせられる面もあり、野球界へのIT支援の実情が垣間見えたお話でした。
LTは11件で、会場やロングトークの影響か、野球が4件と一番多かったです。その他に競技はゴルフ、バスケットボール、テニス、サッカーで、スポーツ文脈で確率分布を解説した方もいらっしゃいました。