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【書籍メモ】『行動経済学が勝敗を支配する』(日本実業出版社)

2024 年 6 月 14 日に日本実業出版社から発売された『行動経済学が勝敗を支配する』を読んだので、感想を綴ります。 なお本書は、著者の今泉拓さんのご厚意でご恵贈いただきました。

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本書は、スポーツを題材とした行動経済学の研究成果を、日本人にとって身近な具体例とともに分かりやすく紹介しています。 行動経済学は、心理学と経済学を融合した学問領域です。 その中の主要なキーワードとして「損失回避バイアス」「フレーミング効果」「概数効果」「同調効果」「サンクコスト」「ナッジ」が登場します。 これらの用語を(聞いたことはあるが)よく知らない方が主な対象読者で、様々なスポーツ事例と紐づいた解説を通じて、数式などを使わずに概念を掴めるように構成されています。 用語を既に知っている方にとっても、純粋なスポーツ分析事例集として楽しめる書籍だと思います。

私は、スポーツとデータ分析に関するコミュニティ「Sports Analyst Meetup」の運営に関わっており、自身の関心と重なる部分が大きい本書は非常に面白かったです。 前提知識を持っている部類の読者であるという注釈は付きますが、書籍全体を通じて平易な表現でサクサクと読み進められると思います。 多くの事例から「人は必ずしも合理的には行動できない」ことを学びます。 ただ同時に、それこそがスポーツの奥深さを生み出しているように感じました。 コンピュータ将棋が十分に強くなった現在でも、人間同士の対局が我々を魅了するのと同じような理由があるのかもしれません。