u++の備忘録

【書籍メモ】『ディープフェイクの衝撃 AI技術がもたらす破壊と創造』(PHP 新書)

『ディープフェイクの衝撃 AI技術がもたらす破壊と創造』(PHP 新書)を読みました。 画像・テキストなどを生成する人工知能技術(生成 AI)が急速な発展を遂げる中で、これらの技術が生み出す危険性の側面を理解しておくことは非常に重要です。 本書はディープフェイクにまつわる歴史や事件、技術的背景や対策を紹介しつつ、生成 AI の脅威のみならず人間との共存の可能性についても議論しています。

www.php.co.jp

著者は「計算社会科学」と呼ばれる研究領域が専門の笹原和俊准教授(東京工業大学)です。 『フェイクニュースを科学する』(化学同人)や『計算社会科学入門』(丸善出版)などの著書もあります。 計算社会科学は、大規模な社会データを分析・モデル化して、人間行動や社会現象を定量的・理論的に理解しようとする学問です*1

「ディープフェイク」を冠した一般向けの日本語の書籍には珍しく、GAN や拡散モデルの仕組みなど技術的な観点にも踏み込んで解説している点が印象的でした。 生成 AI がバズワードとなりつつある昨今、技術的背景をある程度押さえておくことは健全な議論のために大切な要素です。 想定の対象読者に向けて数式は使わず、概念的な解説にとどめています。 当時の Facebook(現 Meta)社が Kaggle で開催した「Deepfake Detection Challenge」についても言及がありました。

本書はディープフェイクの社会問題と技術的背景の両者を広く解説している点で、ディープフェイクについて知りたい方にお勧めしやすい日本語の書籍だと思います。 ある程度知識がある方にとっては、既知の内容が多めかもしれません。 たとえば機械学習の基礎知識がある方は、第 2、3 章を流し読みできる気がします。